著:塩田武士
あらすじ
出版大手「薫風社」で、カルチャー誌の編集長を務める速水輝也。笑顔とユーモア、ウィットに飛んだ会話で周囲を魅了する男だ。
ある夜、上司から廃刊の可能性を匂わされたことを機に組織に翻弄されていく。
社内抗争、大物作家の大型連載、企業タイアップ…。飄々とした「笑顔」の裏で、次第に「別の顔」が浮かび上がり———。
感想
本屋大賞2018年のノミネート作品だった「騙し絵の牙」。
出版界と大泉洋という二つの「ノンフィクション」を題材に書く社会派にして本格ミステリー作品。主人公・速水が大泉洋で「あてがき」された作品なだけあってキャラクターがとても見えやすく、ウィットに飛んだ会話をする大泉洋がありありと想像できました。
読みはじめの印象では、人たらしの編集長・速水が、家庭内の不和や社内政治に振り回され奔走しながらも、速水の「物を作ること」に誠実に向き合おうとする姿に惹きつけられた仲間たちに助けられ、挽回していくサクセスストーリーっぽいなと高を括っていたのですが、一筋縄ではいかない展開に中盤から終盤にかけてページをめくる手が止まりませんでした。
出版界のいろいろが詳しく書かれているのも、とても興味深かったです。
映画の方も6月公開ということで、速水の活躍もさることながら、作中のずるく強かな新人部下を松岡茉優ちゃんがどう演じるのかも、とても楽しみで
公開が待ち遠しい作品の一つです。
*1:裏書きより